鉋の正しい使い方!木工職人が基礎知識からメンテナンス方法まで詳しく解説

鉋 DIY
鉋の正しい使い方!木工職人が基礎知識からメンテナンス方法まで詳しく解説

DIYが好きな方でも、鉋を持っている方は少ないのではないでしょうか。

鉋は家具職人や大工さんが使う道具で、使い方が難しいイメージがあります。
また、刃の研ぎ方やメンテナンス方法がわからないなど、なかなか手を出しづらい道具だと思います。

だがしかし!実際には少し使い方を覚えるだけで誰でも使うことができる便利な道具なのです。

鉋を使うことで、今まで出来なかった加工や、精度の高い加工ができるので、使いこなすことができれば、アイデアの幅も広がること間違いなし!

今回は、初心者の方でもわかりやすく、鉋の使い方や基礎知識、メンテナンス方法を紹介させて頂きます!

鉋ってなに?

鉋と聞くと、こちらをイメージしませんか?

こちらは平鉋といって鉋の種類の一つです。

実は、鉋には沢山の種類があり、私が思いつくだけで35種類
ネットで調べてみると、50種類という情報もあったので驚きです(笑)
また、一つの鉋に対しても数種類のサイズがあり、とても奥が深い道具なのです

鉋は、日本では古くから使用されている道具で、弥生時代の遺跡から出土した槍(ヤリ)鉋が日本最古の鉋と言われています。

また先ほどの平鉋は、室町時代に中国から伝来したと言われており、とても歴史が深い道具でもあります。
そんな歴史ある道具を使えるようになるなんてワクワクしませんか?(私は誇りに思ってます!)

平鉋で木材を削ると、ツルツルとした光沢のある表面に仕上げることができます。

私個人的には「木材の表面を綺麗に仕上げる」と言うことに関しては、機械を使用するよりも遥かに優れていると感じます。

そこで、本日は数ある鉋の中から最も一般的で、初心者でも使いやすく、DIYでも役に立つ平鉋の使い方を紹介させて頂きます!

鉋の種類

鉋には多くの種類があり、様々な用途に合わせた大きさや形が存在します。
せっかくですので、その中でもDIYで役に立ちそうな鉋を紹介させて頂きます。

1、平鉋

代表的な鉋の一つ。木材の表面を平らに削り、ツルツルとした艶がかった面に仕上げることが出来ます。

2、替刃式鉋

平鉋の刃先が替刃式になっており、刃こぼれや切れなくなると新品の刃に交換して使うことができます。
刃を研ぐ必要がないので、初心者の方にお勧めですが、使っていく上で費用がかかるのが難点です。

3、小鉋

平鉋を小さくした鉋。片手に収まるサイズで、小さい木材の表面を削ったり、角の面取り加工などに役立ちます。

4、電気鉋

電動の平鉋。ボタン一つで、刃物が高速回転し、平鉋に比べて多く削り取ることができます。主に表面が荒い木材を平らにしたり、厚みを調整する際に使用します。しかし、平鉋と違って表面を綺麗に仕上げることはできません。

5、際鉋

平鉋では削ることができない、角の際を削ることができます。

6、反鉋

台の面が緩やかな曲線になっている鉋。
木材の表面をえぐるように削ることが出来きます。
曲線を描いた材料や椅子の座面を削るときに使用します。

7、面取り鉋

木材の角を決まった大きさに削ることが出来る鉋。

8、底取り鉋

溝を掘るときに使用する鉋。主に引き戸の溝を削る時に使用します。

9、丸鉋

内丸と外丸の2種類があり、曲面を削る際に使用します。
内丸鉋は角材から丸棒を削り出すときに役に立ちます。

今回は9つの鉋を紹介させて頂きました。
初めて見る道具ばかりかと思いますが、頭の片隅に入れておけば、いつかの時に役に立つかもしれません!

鉋でできること

鉋の存在は知っているけど、そもそも鉋で何が出来るの?と思っている方もいらっしゃるかと思うので、いくつか鉋でできることを紹介させて頂きます。

1、木材の表面を削って綺麗にする

これは、鉋ときくと誰もがイメージする光景かと思います。
丸太からカットした木材の表面はノコギリの跡(鋸目という)が残っていたり、ザラザラとしています。
鉋を使うことで、表面の鋸目を削りとり、ツルツルとした綺麗な面に仕上げることができます。

2、ハギ目の段差を平らにする。

細い材料を並べて接着して、一枚の板にする方法があります。
材料同士を接着すると、境目がズレて段差が出来ることがよくあります。その際に鉋で段差を削ることができ、綺麗な一枚板に仕上げることができます。

3、面取り加工

市販の材料は角が立っていて、そのまま使ってしまうと、触ったときに痛かったり、最悪切れてしまうこともあります。
この危険な角を、鉋を使って容易に削ることができます。
さらに、ただ削るだけではなく、45度に切り落としたり、丸くしたりすることができるので、デザインの幅が広がります!

4、引き出し幅の調整

デスクや棚の引き出しを作る際に、組み立てた後に入らなかったり、キツかったりすることがあります。鉋で左右の板を削ることで引き出し全体の幅を微調整することができます。

5、棚の板同士のズレを平にする

板を組み立てて棚を作る時、板のサイズが若干異なり、段差が出来てしまう事がよく起こります。
そんな時は鉋を使う事で、簡単に平にする事が出来ます。

鉋の使い方

まず、鉋を使うためには、鉋の構造、刃の調整方法、木材の削り方、メンテナンス方法を知る必要がありますので、それぞれ詳しく解説していきます。

また、この章では鉋の使い方以外に、木材の知識も紹介しているので、
鉋の使い方はもちろん、確実にDIYレベルも上がること間違いなしです!

鉋の構造

それでは鉋の構造について写真を見ながら解説していきます。

鉋は、鉋台、鉋刃、裏金の3つで構成されています。

使用する時は、鉋刃を玄翁で叩いて刃口から出る刃の量を調整して削ります。

また、鉋刃を取り出す時は、鉋台の頭を叩くと外れます。

裏金の説明は少し専門的になってしまいますが、
簡単に言うと、逆目を防ぐための押さえ金具です。

ん?逆目?どゆこと?

ってなりますよね(笑)私も最初はさっぱりわかりませんでした。
でも木材を扱う上でとても役に立つ知識なので、是非紹介させて下さい。

木材の繊維には向きがあり、繊維の向きにならうことを順目、逆らうことを逆目と言います。

順目の向きで鉋をかけると、削りやすくツルツルとした綺麗な表面に仕上がります。
逆目の向きで鉋をかけると、鉋が引っ掛かりやすく、表面がバサバサになってしまいます。
家具工房の職場では、この現象を逆目が起きると言っています。

なぜバサバサになるかと言うと、

木材に鉋刃があたると、めくれ上がるように削られます。その時、めくれ上がることで刃物よりも先に割れが発生し、これを先割れといいます。そしてこの先割れは、繊維にそって割れが進行します。

順目の場合は、繊維の向きが上に向いているので、上方向に割れが進み、内部に進行することはありません。

しかし逆目の場合は、繊維の向きが下方向のため、割れが内部に進みます。

そのため、より多く削ろうとするため、引っ掛かったり表面がバサバサになったりします。
一度バサバサになってしまうと、修復するのは結構大変なので避けたいところです。

この厄介な逆目を防いでくれるのが裏金です。なぜかというと、

写真のように裏金があることで、めくれあがる角度がよりキツくなり、
先割れが内部に進行する前に、めくれあがった繊維を手前で潰して防いでくれます。

ですので、鉋を使用するときは、裏金も鉋刃と同様に玄翁で叩いて適切な位置に調整する必要があります。

鉋刃の調整

鉋台の刃口から出る刃の量を調整するために、刃の出し方と引っ込め方を解説します。

刃の出し方

まずは、玄翁で直接鉋刃を叩きます。
鉋刃の中心を叩けば全体的に刃が出ます。

写真のように刃の出を確認します。
わかりやすいように刃を多めに出しましたが、
本来であれば、髪の毛1本分またはそれ以下で調整します。

右を叩けば右が出ます。

同様に左を叩けば左が出ます。

このように真ん中と左右を叩いて刃の出の量が均一になるように調整します。


※ちなみに、鉋刃の横を叩いて左右の出を調整をすることもできますが、
このやり方は鉋刃のカタチが崩れてしまうので、あまりお勧めしません。(見た目の問題)

刃の引っ込め方

叩いてばかりいると刃が出過ぎてしまうので、次は引っ込め方です。

鉋台の頭(台頭という)を叩くと鉋刃が引っ込みます。
刃の出し方と同様に中心を叩けば全体的に引っ込みます。

右を叩けば右が引っ込みます。

左を叩けば左が引っ込みます。

この時の注意点として、
木口の面を叩くと、鉋台が割れてしまう恐れがあるので、角を斜め45°で叩くようにしましょう。

実際に鉋刃を調整する流れはこんな感じです。

1、鉋刃の中心を叩く。

2、刃の出を確認する。

3、少し出しすぎたので、台頭の中心を叩いて引っ込める。

4、右側が出過ぎているので、台頭の右を叩いて調整する。

5、左がひっこみすぎているので、鉋刃の左を叩く。

6、水平にはなったが、全体的に出過ぎているので、台頭の中心を叩いて引っ込る。

7、少し引っ込めすぎたので、鉋刃の中心を少し叩く。

8、刃が均一に出ているので、これで調整は完了。

このようにして、叩いては確認して、引っ込めては確認して、左右の刃の出を調整してを繰り返しながら調整します。

うまくいったなと思ったら、実際に木材を削ってみて、削れ具合を見ながら再度調整するのを繰り返します。

裏金の調整

裏金の調整方法は、写真のように鉋を逆さに持ち、鉋刃との隙間をみながら裏金を叩いて位置を調整します。

調整する前の位置。

調整した後の位置。

鉋刃と裏金の隙間は0.3〜0.5mmほどが理想です。
より薄く削りたい場合は0.3mm以下で設定します。

調整する際に出しすぎてしまった場合は、台頭を叩いて引っ込めます。
その際に鉋刃もひっこんでしますので、先ほどのように鉋刃も調整する必要があります。

鉋で木材を削るコツ

まずは、右手で台の下を握ります。
左手は台の頭に添えます。

両手で押さえつけ、木材の面と鉋台の面がしっかり密着していることを意識しながら、腕を引くのではなく、体全体を引くイメージで鉋を引きます。
このとき腹筋に力が入っていれば、良い姿勢で削れている証です。

引く時は、一定のスピードで引きます。木材の種類によって引く速さを変えると、うまく削れたりするので試行錯誤してみてください!

引く方向は基本順目の向きで削ります。
順目か逆目の見極め方は、木材の表面を観察します。

これはウォールナット材の表面で、よ〜く見ると、道管と呼ばれる穴がたくさんあります。

この道管の形で順目か逆目の向きが分かります。

道管に対して赤矢印の方向に削れば順目で、スムーズかつ容易に削れ、綺麗な面に仕上げることができます。

青矢印の方向に削れば逆目となり、鉋が引っ掛かったり、バサバサとした仕上がりになることがあります。

順目と逆目の向きが混同している箇所もよくみられ、削る難易度があがりますが、裏金をしっかりと調整することで削ることができます。

また、木の種類によっては、この道管がとても小さく観察できない材料もあります。

例えば、ヒノキや杉、カエデなど。

左:カエデ 右:ヒノキ 

この場合は、手で撫でてザラザラする方向を調べたり、実際に削ってみる必要があります。

最初はどうしても、力の入れ方や鉋を引くスピード、刃の調整などの感覚がないと思いますが、
削っていくうちにおのずと感覚がついてくるので、焦らずどんどん木材を削ってみてください!

鉋のメンテナンス方法

鉋で、何度も何度も木材を削っていくうちに、徐々に切れなくなっていきます。
その原因は、鉋刃の刃こぼれや、鉋台の平面が狂ってしまうのが主な要因です。

こちらでは、鉋刃と鉋台のメンテナンス方法について解説していきます。

刃の研ぎ方

木材を削っていくと、どうしても刃こぼれが起きてしまいます。
刃こぼれが起きると、削る時に重く感じたり、綺麗な面に仕上げられなかったりするので、
刃の研ぎ方を習得する必要があります。

刃の研ぎ方はこちらの記事で詳しく解説しているので、ご参考ください!

鉋台の調整

木材を削っていくうちに、鉋台は徐々にすり減っていきます。
また、鉋台も木ですので、経年変化で反ったり捻れたりすることもあります。

それにより、鉋台の平面が狂ってしまうと、刃を出しているのにうまく削れなくなってしまうので、鉋台を調整する必要があります。

鉋台は、使う用途によって形状が変わります。

上から荒仕工(荒削り)、中仕工(中削り)、上仕工(仕上げ削り)の3つの形状があります。
今回は一番汎用性がある中仕工の形に仕上げていきます。

鉋台の調整手順

1、鉋刃を引っ込めます。

2、定規をあてて現状の状態を確認します。(アングルがずれてるのはスルーして下さい笑)

この時、下端定規を使うと正確に確認することが出来ます。
下端定規とは、直線の精度が高く、より正確に平面を確認する際に使用します。
(私は持っていなかったので、仕方なく差金を使いました、、、)

鉋台の形状はとても繊細です。
少しでも台が狂っていると、削るときにもろに影響が出てくるので、
とくに綺麗な面に仕上げたい場合は、より正確に平面を確認できる下端定規が必須となります。


■R付 ステンレス下端定規 400mm 刃を出したまま確認が可能!

3、写真のように台の前と後ろに窪みをつくります。

基本的には、台直し鉋と呼ばれる鉋で削りますが、初心者の方は持っていないので、
平な板に貼り付けたペーパーやすりで削っても大丈夫です。


■六兵衛 台直し鉋3点セット 削ろう会発! 立鉋用定規+下端定規付

この時、えんぴつで全体に線を引き、削る箇所、削らない箇所をしっかりと確認しましょう。

適度に定規をあてて確認しながら削っていき、先程の写真のような形になれば調整の完了です。

以上で、鉋刃と鉋台のメンテナンスは完了です。

おすすめの鉋

これまで鉋の使い方を紹介させて頂きましたが、いざ使ってみよう!と思っても、
実際にどこで購入したらいいのか分からないという方は多いかと思います。

価格もピンキリで2,000円から、高価なものだと数十万円するものもあります。
この価格の違いは刃物の質によって大きく変わります。

私は3万円の鉋と3000円の鉋を所持していますが、
DIYで使用するなら3000円〜4000円代の鉋で十分だと思います。

理由は、やはり3000円代の鉋は3万円と比べて刃こぼれが早い感覚はありますが、
キレ味に関しては、しっかりと研げば問題なく使えているからです

ですので、まずは3000〜4000円代で慣れていくのが良いかと思います!

お近くのホームセンターやネットでも購入できるので、是非チェックしてみてください!


大五郎 平鉋 60mm KONYO コンヨ No.11506

鉋の使い方まとめ

鉋の種類から使い方、メンテナンス方法を紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。

平鉋で木材を削るだけでも、実は多くの工程があり、
刃の出の調整 → 裏金の調整 → 削る → 刃を研ぐ → 鉋台の調整
これを繰り返しながら削っているのです。 

他の鉋に関しても、基本的な構造や工程は一緒なので、興味がある方はトライしてみてはいかがでしょうか!

以上、「鉋の正しい使い方!木工職人が基礎知識からメンテナンス方法まで詳しく解説」の記事でした!

最後までお読み頂きありがとうございました!