鉋を使っていると、どうしても刃こぼれが起きてしまいます。
刃のキレ味が悪くなると、作業性が悪くなり、木材の表面を綺麗に仕上げることができません。
本日は、私が家具工房の職場で教わってきた鉋刃の研ぎ方や基礎知識を、初心者の方でもわかりやすく紹介させて頂きます。
刃を研ぐタイミング
そもそも刃を研ぐタイミングがわからない方もいらっしゃるかと思います。
刃を研ぐタイミングは、鉋を使っていく中で幾つかのサインを出してくれますので、
見極め方を紹介します。
・刃先を光に当てた時に反射光が鈍くなる
・刃先に刃こぼれがある
・削った表面が荒れてくる(引っ掻いたような線ができたりザラザラしたり)
・鉋を引くとき、重く感じるようになる
以上のような傾向が見られたら、刃を研ぐことをオススメします。
砥石の選び方
鉋刃を研ぐためには、砥石の選定が重要です。
砥石には、いくつかの種類や番手があり、最初はどれを購入したらいいのか分からないかと思いますので、まずは砥石について紹介させて頂きます。
砥石の種類
砥石は、自然から採掘された天然砥と、人工的に作られた人造砥石の2種類があります。
天然砥と人造砥石のどちらを選べばいいの?
結論から言うと、人造砥石をオススメします。
理由は、
人造砥石は天然砥に比べ、安価で性能が安定しているからです。
天然砥は、人造砥石の普及により採掘量が減っているため、人造砥石に比べて非常に高価です。
また、天然のため番手の規格がなく、購入する際は、刃物に合った硬さと粒度を直接見て・削って選ぶ必要があります。
その反面、刃物と相性が良い砥石を選ぶことができれば、人造砥石に比べてより綺麗に研ぐことができます。
それに比べて人造砥石は、安価で、番手が規格化されているので選びやすく、間違いなく購入することができるのでオススメです。
番手の選び方
使用する砥石の番手は、#800〜#1000の粗砥石と#6000の仕上げ砥石がオススメです。
その理由と、番手について詳しく解説していきます。
人造砥石は、粒度の細かさに違いがあり、大きく分けて粗砥石・中砥石・仕上げ砥石の3つに分類されます。
また、粒度の細かさを表す数字を番手(#)といい、数字が大きくなるにつれて粒度は細かくなります。
それぞれに該当する番手(#)は以下の通りです。
荒砥石#200〜#400
中砥石#800〜#1000
仕上げ砥石#6000〜#12000
鉋刃を研ぐ手順は、
荒研ぎ(粗砥石):刃先の欠けを短時間で取り除く
↓
中研ぎ (中砥石):小さな刃こぼれや、荒れた刃先を整える
↓
仕上げ(仕上げ砥石):中研ぎよりもさらにキレ味をよくする
となります。
刃先に大きな欠けが無く、刃こぼれが少ない場合や、
ちょっと切れなくなったと感じた場合は、荒研ぎを省いても大丈夫です。
私の経験上にはなりますが、先ほどオススメしたように、
#800〜#1000の砥石で中研ぎ → #6000の砥石で仕上げ
で十分なキレ味を出してくれます。(大きな刃こぼれがある場合は、荒研ぎから)
砥石は番手が上がるにつれて金額も上がっていき、#8000以上になると大幅に値段があがります。
ですので、コスパ的にも#800〜#1000の中砥石と#6000の仕上げ砥石を使用するのがオススメです!
オススメの砥石
キング砥石 キングデラックス 高級刃物用砥石 標準型 中仕上用 #1000 DX-1000 1点
キング 仕上砥石 刃物用 S-1 粒度 6000(1コ入)【キング砥石】
鉋刃の研ぎ方
鉋刃の研ぎ方は、刃の持ち方や研ぎ方、力の入れ方など、人によって様々で、正解は無いと思っています。
今回は、一般的なやり方を踏まえた私のやり方を紹介させて頂き、自分なりの研ぎ方を見つけて頂ければ良いなと思います!
使用する道具
使用する道具はこちら。
#1000の中砥石
#6000の仕上げ砥石
ダイヤモンド砥石(砥石の平面をだすため)
金盤(鉋刃の裏押しに使用)
金剛砂
鉋刃と裏金の裏押し
鉋刃は刃先を研ぐだけではなく、裏面がしっかりと平面になっていることが重要です。
この裏面の平面を出すことを裏押しと言います。
なぜ裏押しが重要かというと、
鉋刃と裏金を鉋台にセットした時、両方の裏面が平面になっていないと、お互いの間に隙間ができてしまいます。
隙間があることで、逆目でうまく削れなかったり、隙間に鉋屑が挟まり、詰まる原因になってしまいます。
裏押しのやり方
本来であれば、裏押しをする前に刃先を玄翁で叩いて刃先を曲げる裏出しという工程がありますが、
初心者の方には難しいので、今回は省略させて頂きます。気になる方は検索してみてください。
金盤に金剛砂(研磨用の砂)をほんの少しかけ、水を2滴ほど垂らします。
(自宅に金剛砂がなかったので、写真では使用していません😅)
ちなみに、金剛砂はホームセンターで購入することができます。
金剛砂 C砂 中目 150g ポリ容器入り ナニワ研磨工業 エビ印 RA-0050
■常三郎 金盤レギュラーサイズ鉋の裏刃研ぎに!!
適当な持ちやすい角棒を写真のようにセットし、しっかりと面に接するように一定のスピードで前後に動かします。
角材がない場合は、手で持って削っても大丈夫です。
前後に動かしていくと、金剛砂の削れる音が徐々に小さくなっていき、水が乾いてきます。
水が乾いたら、動かすスピードを早めて数秒削ります。
様子を見てみると、曇り具合からわかるように、削れてる面にバラつきがあります。
全体が均一に削れるまで、ひたすら削ります。
全体が均一に削れました。
最初は全体が曇りがかっていると思いますが、これを繰り返すことで徐々に鏡面に近づきます。
ある程度削れたら、仕上げに金剛砂を洗い流し、水のみで同じように削ることで鏡面になります。
刃先全体が鏡面になれば完了です。
裏金も同様に裏押しをします。
二つの裏出しが完了したら、写真のように裏面同士を合わせて光を通して隙間がないか確認します。
#1000の砥石で中研ぎ
まずは事前に砥石を水につけます。砥石に水分を含ませることで、スムーズに研ぐことができます。
刃先に欠けがある場合は、荒研ぎから始めますが、中研ぎとやり方は同じなので省略させて頂きます。
まずは、ダイヤモンド砥石で#1000と#6000の砥石の面を平にします。
刃の持ち方は、写真のように右手で鉋刃を持ち、左手で中心を押さえ、斜めにセットします。
刃先の面が平らに接するように意識しながら、鉋刃をおさえつけ、砥石全体をつかって前後に動かします。
この時、刃先が平らに接しつつ、刃先に力を込めるように意識することが大切です。
中研ぎは刃返りができたら完了です。
刃返りとは、刃先が捲れ上がることで発生するバリのことで、刃が研ぎ上がった証です。
刃先の裏を指で撫でて、刃返りが確認できたら中研ぎの完了です。
中研ぎの注意点として、
刃先が緩やかな曲線を描いていることが重要です。
図は分かりやすいように大きめの曲線を書きましたが、
実際はもっと直線に近い曲線にします。
あまり大きな曲線になってしまうと、幅広く削れなくなってしまいます。
両端が中心より飛び出していると、材料を削った時に、中心よりも先に両端が食い込み、削った後に線が出来てしまいます。
角が立ってしまった場合は、研ぎながら左右に力をこめて削ることで曲線を作ります。
#6000の砥石で仕上げ研ぎ
#6000の砥石をつかって先ほどと同じように、砥石全体を使って研ぎます。
仕上げ研ぎのポイントは、研ぎ汁をうまく活用することです!
研いでいくと、黒い汁がでできます。これを研ぎ汁といいます。
この研ぎ汁はとても細かい金属の粒子で、この研ぎ汁を生かすことで、刃先を砥石以上に細かく削ることができ、より綺麗に研ぐことができます。
刃先全体が鏡面になるまで研ぎます。
最後に裏面を軽く研いで、刃返りを取り除いて完了です。
うまく研げたかを確認する方法
研ぎ終わった後に、刃先を触って、少し危ないと感じるのがベストです。
その他にも、私がよくやってる確認方法をいくつか紹介します。
1、全体が綺麗な鏡面になっている
うまく研げている場合は、全体が均一に鏡面になります。
研げていない箇所は、モヤっとするので、その場合は再度仕上げ砥石で研ぎ直しましょう。
2、鏡面に映ったものが歪んでいない
研ぐ際に、刃先の面が綺麗に接していない場合、刃先が曲面になっていまします。
曲面になってしまうと、刃先の角度が大きくなり、削りにくかったりします。
この場合は、中研ぎからやり直しましょう。
3、刃こぼれがない
刃先に刃こぼれが無いか確認しましょう。
4、生毛がよく切れる
綺麗に研げた刃は、皮膚の上を軽く滑らせただけで、生毛が切れます。
あまり切れないと感じたら、仕上げ砥石で研ぎ直してみましょう。
鉋刃の研ぎ方 まとめ
これまで砥石の選び方から鉋刃の研ぎ方、裏押しの方法を紹介させて頂きましたが、いかがだったでしょうか。
今回紹介したやり方は、私が家具工房の職場で実際に教わってきた方法です。
しかし、人はそれぞれ体の使い方や力の入れ方に違いがあり、研ぎ方も様々で、この方法が絶対というわけではありません。
実際に、鉋刃の研ぎ方を紹介している別サイトを見てみると、違うことが書いてることもあります。
あくまで一つのやり方として参考にして頂き、自分にあったやり方を見つけて頂ければと思います!
こちらの記事では、鉋の使い方について紹介しているので良かったらご覧ください!
以上、「鉋刃の研ぎ方|木工職人が砥石の選び方から研ぎ方のコツまで詳しく解説」の記事でした。
最後までお読み頂きありがとうございました!